小説:梨木香歩『西の魔女が死んだ』

読む前の印象は、好きそうな話だなあ。

読んだ後の印象は、やっぱり好きな話だなあ。

 

私自身、自分の祖母が大好きということもありますが

こんな素敵なおばあちゃんがいたら憧れるだろう描写がたくさん。

 

庭のレタスとキンレンカ作るサンドイッチ。

かまどで作る野いちごのジャム。

鶏を飼うのは難しそうですが、真似したいと思うことがたくさん。

 

 主人公のまいは繊細で、まいの母親曰く「扱いにくい子」。

学校に馴染めずおばあちゃんの家でしばらく暮らすことに。

 

おばあちゃんは魔女の家系であると聞き、興味を持つまい。

この作品でいう魔女は魔法を使ったり、呪いをしたりではなく

少しだけ人より直感力が強く、生きることの知識や知恵を持った存在のこと。

 

魔女の修行は精神を鍛えること。

おばあちゃんはまいに魔女の心得を教えていきます。

早寝早起き。

食事をしっかりとり、よく運動し、規則正しい生活をする。

 

いちばん大切なのは意志の力。

自分で決める力、自分で決めたことをやり遂げる力です。

 

魔女は自分の直感を一番大事にしなければなりません。
でも、その直感に取り憑かれてはなりません。

 

 

 

学校に馴染めないまいに伝えるおばあちゃんの言葉が素敵。

 

その時々で決めたらどうですか。

自分が楽に生きられる場所を求めたからといって

後ろめたく思う必要はありませんよ。

サボテンは水の中に生える必要はないし

蓮の花は空中では咲かない。

シロクマがハワイより北極で生きる方を選んだからといって

だれがシロクマを責めますか。

  

私もいつか、こんな贈り物のような言葉を

誰かにプレゼントできる存在になりたいと思いました。

そのためには魔女になる!と修行中です。

 

 

自然の持つ力や美しさの描写にも心が温かくなります。

 既に亡くなっているおじいちゃんが

鉱物を好きだというのにも親近感を持ちました。

 

何度も読み返したくなる、大切な本になりました。